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相談事例 その8

遺言書の法務局保管制度を利用しようと思うがどうか

Q.夫が高齢で最近体調も思わしくない。夫は再婚で前妻との間に2人の娘がいるが私は会ったこともなく、夫亡き後の相続が心配だ。
もし法定相続分となれば、自宅を売らなければいけなくなる。
夫もそれを懸念しており、自宅や預貯金すべてを私に相続させる遺言書を書こうと言っている。
遺言書には、調べたところ3つの方法があることが分かった。
その中で最近出来た法務局保管制度化がいいと思ったが、どうだろうか。



A.そうですね、法務局保管制度は印紙代6千円のみですから、公正証書遺言と比べ安価で申請の手間も少なく、自筆証書遺言のような開封時に家庭裁判所による時間のかかる検認も不要です。
また、遺言書の体裁も法務局が確認してくれるため、それが整わず無効になる心配もありません。
と、一見いいことずくめのように見えますが、注意も必要です。
今回のケースのように、特定の相続人がすべてを相続する、と遺言書に書いてあることがほぼ明確な場合、他の相続人は遺言書の閲覧申請に協力してくれない可能性があります。
法務局保管の遺言書を閲覧するには、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要なのです。
今回は前妻の娘さんと面識が無いとのことですが、相続人同士がもともと仲が悪い、といった場合もなかなか協力が得られません。
「なぜ、自分の取り分が無いのに手間をかけてまで協力しなければならないのか」という理屈です。
結果、改めて分割協議を行ったり、少なくないお金を渡して協力してもらったり、などということになりかねず、せっかくの故人意思が適わなくなります。
また、協力してもらったとしても、遺留分侵害額請求をされることは頭に入れておくべきです。
今回のケースだと、計4分の1を請求される可能性があります。
どうしても揉めたくないなら、遺言で娘さんの取り分も考慮することです。
それが遺留分に満たなくても、「父は考慮してくれた」と思われれば、請求される可能性は下がるのではないでしょうか。

それか、閲覧申請のためだけに他の相続人に頭を下げるのは嫌だ、連絡を取るのも煩わしい、と言うことであれば多少費用をかけてでも公正証書遺言にすることです。
公正証書は裁判判決と同等の効力があるため、ちゃんと本人の意思で書かれたものならば揉める余地はありません。
さらに、遺言執行者を遺言書で奥様に指定しておけば、他の相続人の承諾もサインも不要です。
奥様は粛々と遺言書通りに執行すればいいのです。
それでも、遺留分侵害額請求のリスクは残ります。
こればかりはどうしようもありません。

以上、結論としては、少しでも揉める余地があるのであれば公正証書遺言にした方が無難でしょう。

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